医薬翻訳家とはどんな仕事?平均年収はどれ位?


翻訳家という仕事は聞いたことがあっても、医薬翻訳家というとどのような仕事なのかよく知らない、という人は多いと思います。これから翻訳家を目指したいと考えている人にとって、医薬翻訳家という選択肢はどうなのでしょうか?仕事の内容と平均年収について考えてみましょう。

医薬翻訳家の仕事とは?

医薬翻訳というのは、その名前の通り医薬に関する翻訳を示します。その中でも学術系や医薬系、医薬機器系などのジャンルに分けられます。
たとえば医学論文や学会用の資料、医学書、医学系の雑誌やジャーナルに掲載された記事の翻訳が学術系というジャンルになります。これは特に専門的な知識が必要となり、医薬翻訳の中でも難易度は高めです。
最も多い仕事といえるのは医薬系でしょう。特に治験翻訳と呼ばれる、新薬の治験結果に関する翻訳は数も多く、それほど難しくはないものもあるので医薬翻訳を始めた人がまず受ける仕事として一般的です。医薬系には治験翻訳以外にもその副作用に関するものや、医薬品の研究開発、承認申請書類、販売促進に用いる資料なども含まれます。
医薬機器系は医薬機器の研究開発における資料や実地で用いた際のレポート、取扱説明書や現場でのマニュアルなどの翻訳です。それほど頻繁に翻訳依頼があることは少ないのですが、翻訳には医学系以外に多少の工学系の知識も必要となることがあるので、誰でも翻訳できるとは限りません。販売する企業で雇用している翻訳家が行うことも多いようです。
それらに含まれないものとして、医薬部外品やサプリメント、化粧品、バイオ関連の資料や申請書などを翻訳することもあります。これらは医学用語というよりも、成分などに言及されることが多いため多少は化学分野の知識などが必要でしょう。これは医薬品に比べて製品となる数が多いため、比較的件数も多くなりますが1つあたりの文章量は少なめです。
こうした文書を翻訳するのが医薬翻訳家の仕事です。基本的には英語の文書を日本語に翻訳するのですが、反対に日本語の文書を英語に翻訳することもあります。また、英語以外の言語を翻訳できる人は人数が少ないので、ほかの言語を習得している場合は翻訳する機会は少ないものの、仕事の競争率は低いでしょう。

なぜ医薬系の仕事が多い?

医薬系の仕事が最も多いといいましたが、それはなぜでしょうか?理由として、新薬開発プロセスがあります。新薬を開発するといっても、すぐにできるわけではありません。最低でも10年はかかる場合がほとんどです。新薬を開発するには、まず基礎研究を2~3年行い、非臨床試験を経て臨床試験を行います、この時点で5年以上、場合によっては10年以上経過しています。その後承認申請と審査を経てようやく製造が始まります。これだけの長い時間をかけて行うのが新薬開発なので、当然その間に計画書や報告書、説明文書など多くの資料が作られます。そのため、新薬開発においては新薬一つ一つの資料が大変多くなるので、翻訳依頼も数が多くなります。
特に治験翻訳は量が多くなります。治験に関連した書類は主なものだけでも50種類以上あり、その中で外部に翻訳を委託する案件も10種類以上あるといわれています。例えば、準備段階での治験薬概要書や治験実施計画書、治験の被験者から同意を得るために説明する際に使う説明文書や同意文書、治験を行っている期間の経過を記録した症例報告書や有害事象報告書、更に地検が完了した後も、統計解析報告書や治験総括報告書などがあります。しかもこれらの書類は事細かに記録されているので1つずつの枚数がかなり多いため、一度に翻訳できる量も限られてきます。
そのため、医薬翻訳の中でも医薬系は特に数が多くなります。

平均年収はどれくらい?

それでは医薬翻訳家の年収は平均してどのくらいになるでしょうか?翻訳家にはフリーランスの人が多いのですが、フリーランスの場合、最初のうちはなかなか仕事が得られず、収入も控えめになることが多いため年収200万円にも満たないことがよくあります。その反面、翻訳のスピードと正確さを認められ、仕事を優先的に依頼されるようになれば年収一千万円を超えることもあります。
医薬翻訳家は翻訳した文字数に応じて収入を得る出来高制ですが、人によって文字数当たりの単価が異なります。大体一文字当たり、安ければ7円くらいから高ければ20円くらいになります。IT分野の場合、単価が平均して7円から10円といわれていますが、医薬分野の場合は最低が7円、最高が20円以上となり平均は11から14円といわれていて、単価は大体1.5倍と単価が高い方です。特に日本語を英語に翻訳する翻訳者は不足しているので、更に単価は高くなります。
一般的に、翻訳者の年収は平均400万円弱といわれています。医薬翻訳家の場合は、それよりは高くなり平均500万円前後となるようです。単価は高いのですが、仕事の件数が限られることと専門用語の翻訳に時間が取られるため、単価がそのまま年収に反映されることはないようです。

まとめ

医薬翻訳家は医学的な知識が必要となりますが、特殊な翻訳となる分収入も増えるので、翻訳家の中でも人気がある分野です。年収も高めになりますが、出来高制である以上は仕事のスピードと正確性によって収入が左右されるので、自分のスキルが伴わなければ年収を高くするのは難しいでしょう。
それでもチャンスがあれば狙っておきたい分野といえます。